著しい過失・重過失
重過失の例・著しい過失の例
著しい過失や、重過失は、交通事故の過失割合を加重する修正要素です。
そもそも過失とは何かについてご説明したうえで、より重い方からの順番で、重過失の例と、著しい過失の例をご案内します。
バイクや自転車の重過失・著しい過失の例も、後半に掲載します。
過失とは
そもそも過失とは、事故の結果を予見して回避するよう注意すべきだったのに、その注意を怠ったことです。
事故の結果を予見して回避するよう注意すべきだった状況は、その注意義務があったものとされていて、それを怠った「注意義務違反」が過失です。
その注意義務違反の程度が重大な場合が重過失で、一般的な注意義務違反と重大な場合との中間が著しい過失ということになります。
重過失の例
重過失とは、故意に比肩する重大な過失をいうものとされています。
その重過失の例として、以下のような事由(事故と相当因果関係にある場合)があります。
酒酔い運転 (アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態) |
過労、病気及び薬物の影響その他の理由により正常な運転ができないおそれがある場合 |
居眠り運転 |
無免許運転 |
おおむね時速30㎞以上の速度違反 (高速道路を除く) |
重過失減額・重過失免責について
交通事故では、当事者間での損害賠償に関する重過失のほかに、「重過失減額」や「重過失免責」という言葉が出てくることがあります。
重過失減額とは、自賠責保険で、過失が7割以上あるときに、保険金が減額される制度です。以下のページの後半で、「自賠責は過失7割未満なら全額」という見出しでご説明しています。
重過失免責とは、損害保険の契約で、「重大な過失」があるときは保険会社が保険金の支払いを免れるという約款規定がある場合のことです。その規定のない保険契約もあります。
著しい過失の例
著しい過失とは、事故態様ごとに通常想定されている程度を超えるような過失をいうものとされ、重過失よりは軽い加重要素です。
その著しい過失の例として、以下のような事由(事故と相当因果関係にある場合)があります。
酒気帯び運転 (血液1mlにつき0.3㎎以上又は呼気1ℓにつき0.15㎎以上にアルコールを保有) |
携帯電話等の無線通話装置を通話のため使用したり、画像を注視したりしながら運転 |
脇見運転等著しい前方不注視 |
著しいハンドル・ブレーキ操作不適切 |
おおむね時速15㎞以上30㎞未満の速度違反 (高速道路を除く) |
重過失・著しい過失の証拠について
重過失や著しい過失の事由によって加害者の過失割合を加重させるうえでは、証拠が必要になるのが通常です。
その証拠としては、警察・検察の捜査記録や、刑事裁判の記録が役立つことがあり、以下をクリックしてご参照いただければと思います。
バイク特有の重過失・著しい過失
バイクは、運転者にヘルメット着用が義務づけられていることや、運転の体勢が問題となり得ることから、バイク特有の重過失や著しい過失の事由があります。
重過失(バイク)
- ことさら危険な体勢での運転
- 高速道路におけるヘルメット不着用
著しい過失(バイク)
- ヘルメット不着用
(それが頭部外傷など損害拡大に寄与しているようなときに、「著しい過失」に準じて、バイク側の過失を加算修正するのが相当であろうとされています)
自転車の重過失・著しい過失
自転車の重過失・著しい過失の事由として、例えば以下のようなものがあります。
重過失(自転車)
- 酒酔い運転
- いわゆる「ピスト」等の制動装置不良
著しい過失(自転車)
- 酒気帯び運転
- 2人乗り
- 無灯火
- 並進
- 傘を差すなどしてされた片手運転
- 脇見運転等の著しい前方不注視
- 携帯電話等の無線通話装置を通話のため使用したり、画像を注視したりしながら運転すること
このページの著者

弁護士 滝井聡
神奈川県弁護士会所属
(登録番号32182)