交通事故裁判の期間・費用・労力
時間がかかることは覚悟で
交通事故について裁判にするとなると、期間・費用・労力の負担が、示談で終える場合に比べ増加することになります。
とりわけ、裁判は時間がかかるという印象を持たれることが多く、実際、それなりに時間がかかることは覚悟のうえで踏み切る必要があります。
また、損害項目によっては、立証の負担が問題となることもあります。
裁判にするかどうかを判断するうえで、賠償金と対比して検討することになるのが、これら増加する被害者ご自身の負担です。
裁判による期間の増加
裁判にすると、解決までの期間が増えることは避けられません。
すでにかなりの期間が事故発生から経過していることが多く、さらに期間が増える負担感は大きいと思われます。
裁判によってどれぐらいの期間が追加されるかは、事案の内容や、当事者双方ないし裁判所の進め方、和解するかどうか等により変わってきます。
交通事故の裁判の期間は、訴え提起の準備期間も含め、数か月のこともあれば、1年以上になることもあります。
裁判による費用の増加
裁判にするうえでは、期間とともに費用も気になるところと思われます。
裁判のために追加される主な費用としては、弁護士費用(実費を含む)と裁判所に納める費用があります。
裁判で追加される弁護士費用については、弁護士事務所ごとに設定があります。
当事務所では、ご相談の際に費用説明書をお渡ししたうえでご説明しており、ご依頼に際しては委任契約書に明記するようにしています。
裁判による労力の増加
裁判にすることによって、被害者ご自身に追加される労力という観点になります。
弁護士に依頼して裁判にすれば、主張・証拠の提出や和解協議の期日には、裁判所へは弁護士が代理人として出頭し、被害者ご自身は出頭せずにすみます。
ただし、ご依頼いただいた被害者の方にも、打合せ、書類確認や、ご自身にお願いする証拠の準備などの作業はあります。
また、場合によっては、尋問のため裁判所へお越しいただくこともありえます。
打合せ、書類確認、証拠の準備は示談交渉の段階でもありますが、尋問は裁判独特のものです。
裁判における立証の負担
交通事故の被害者が主張する損害の発生や程度については、加害者が争った場合、被害者が立証しなければ認められないのが原則とされています。
このような立証の負担を、立証責任あるいは証明責任といいます。
これにより、裁判で新たな立証が必要となった場合、その負担が加わります。
そのことが、上で述べた期間・費用・労力を増大させることもあります。
(なお、示談交渉においても、立証責任は問題となります)
立証が困難な場合について
裁判における被害者の主張について、内容によっては、立証が困難ということもありえます。
例えば、加害者から争われた怪我の症状について、医学的に立証できないときは、主張が認められないことになります。
改めて病院へ行って証拠を得ようとすると、さらに期間・費用・労力が増え、結局は満足のいく証拠が得られないこともあります。
不利になる要素がないか検討を
事案によっては、示談交渉段階で保険会社が認めていた事項について、裁判になると加害者が争ってきて、被害者側で立証が困難ということもありえます。
裁判にするかどうかは、そのように不利になる要素がないかを検討しながら考える必要があります。
なお、人身交通事故において、加害者が無過失を主張する場合、その立証は加害者がしなければならないこととされています(自動車損害賠償保障法3条ただし書き)。
しかし、実際は加害者が無過失を主張することは多くないです。
裁判における和解案
裁判では、裁判所が和解案を提示するということが多く行われており、裁判を検討するうえではそのことも念頭に置く必要があります。以下のページで解説します。
交通事故裁判の和解案
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このページの著者
弁護士 滝井聡
神奈川県弁護士会所属
(登録番号32182)