死亡事故
センター南 横浜都筑法律事務所

死亡事故

死亡事故の逸失利益

死亡によって得られなくなる利益


死亡事故の逸失利益は、被害者が将来にわたって得られたはずだったのに、死亡によって得られなくなる利益です。

逸失利益は「得べかりし利益」ともいわれます。

仕事の収入は逸失利益となり、家事従事者も金銭評価によって逸失利益が認められる場合があります。

死亡逸失利益の計算と、その計算要素である基礎収入生活費控除率就労可能年数中間利息控除などについてご案内します。


死亡逸失利益の計算


死亡逸失利益を算定する一般的な計算式は次の通りです。

〔死亡逸失利益の一般的な計算式〕
基礎収入 × (1-生活費控除率)
× 就労可能年数の中間利息控除係数

これらの計算要素について以下ご説明します。

基礎収入


基礎収入については、会社員や公務員なら事故前の現実の収入額とするのが原則で、源泉徴収票や課税証明書を資料とすればいいのですが、簡明ではない事案もあります。

さらに、会社役員や家事従事者など、職種・労働形態によって異なる基礎収入の捉え方がされています。

以下のとおりで、文中の「賃金センサス」とは政府の賃金統計です。


会社員・公務員など給与所得者


会社員・公務員などの給与所得者については、事故前の現実の収入額を基礎収入とするのが原則です。

その資料としては、源泉徴収票や課税証明書を用います。

ただし、現実の収入額が賃金センサスの平均額以下の場合、平均賃金が得られた蓋然性があれば平均賃金を基礎収入とします。

また、比較的若い場合(おおむね30歳未満)、賃金センサスの全年齢平均賃金を用いるのが原則とされています。


事業所得者


商工業者、農林水産業者、自営業者、自由業者などの事業所得者の場合です。

基礎収入については、事故前の申告所得額を参考にしますが、その申告額と実収入額が異なるという立証があれば、実収入額を基礎収入とします。


会社役員


会社役員の役員報酬については、労務提供の対価部分を基礎収入とし、実質的に利益配当である部分は基礎収入から除外するのが一般的です。

ただし、会社役員の死亡の場合、怪我による休業損害後遺障害による逸失利益と異なり、役員の地位そのものが失われ、事案によっては会社の廃業となる場合もあることなどから、実質的な利益配当部分を除外するかどうかについて議論もあります。

役員報酬のうち、どれぐらいの割合が労務提供の対価部分であるかについては、会社の規模、利益状況、同族会社か否か、その役員の地位・職務内容・報酬額など、諸般の事情を考慮して判断されます。


家事従事者


炊事・洗濯・掃除・育児などの家事は現実に賃金を得るものではありませんが、判例は、家族のために家事に従事している場合に、賃金センサスを用いて金銭評価をした基礎収入によって逸失利益を認めています。

就労もしていてその仕事と兼業で家事に従事していた場合は、現実収入の金額と賃金センサスを比較して、高い方を基礎収入とします。


学生・生徒等


未就労の学生・生徒等については、就労したであろう時期以降について、賃金センサスの平均賃金を基礎収入として認められるのが通常です。


高齢者


就労していない高齢者については、就労の蓋然性があった場合に、賃金センサスの平均賃金を基礎収入として逸失利益の賠償が認められるとされています。


失業者


失業者については、労働能力、労働意欲と、再就職の蓋然性があった場合に、再就職によって得られるであろう収入を基礎収入として逸失利益の賠償が認められやすくなります。

基礎収入としては、失業前の現実収入の額や、再就職したはずだったと予測される職業、性別、年齢など諸般の事情から判断されますが、平均賃金よりは下回る可能性があります。

生活費控除率


死亡事故の被害者は、もしその後も生存して収入を得た場合、生活費の支出もします。

その生活費の支出分を賠償額から差し引くのが生活費控除であり、その控除の割合が生活費控除率です。

日弁連交通事故相談センター東京支部は、以下のとおり示しています。

  • 一家の支柱
    • 被扶養者1人の場合 40%
    • 被扶養者2人以上の場合 30%
  • 女性(主婦、独身、幼児等を含む)30%
  • 男性(独身、幼児等を含む)50%
  • 兄弟姉妹のみ相続人のときは別途考慮
  • 年金部分については通常より高くする例が多い

就労可能年数


就労可能年数は、事故により死亡しなければ就労を継続できるはずだった年数です。

日弁連交通事故相談センター東京支部は、以下のとおり示しています。

  • 原則は67歳まで
  • 67歳を超える場合、統計による平均余命の2分の1。
  • 67歳までの年数が平均余命の2分の1より短くなる場合、平均余命の2分の1。
  • 未就労者の就労の始期は、原則として18歳、大学卒業を前提とする場合は大学卒業予定時。
  • ただし、職種、地位、健康状態、能力等により上記原則と異なった判断がされる場合がある。
  • 年金の逸失利益を計算する場合は平均余命とする。

中間利息控除


死亡逸失利益の賠償は、将来得られるはずだった逸失利益を現在受け取るので、将来の利息分(中間利息)を差し引いて賠償額を計算することになり、これを中間利息控除といいます。

その控除係数として、ライプニッツ係数と呼ばれるものや、新ホフマン係数と呼ばれるものがありますが、現在はライプニッツ係数を用いる傾向にあります。

これによる死亡逸失利益の計算は、「基礎収入」「(1-生活費控除率)」と、「就労可能年数のライプニッツ係数」を掛け合わせることになります。

年金の逸失利益


年金受給者が交通事故で死亡した場合に、年金の逸失利益として賠償が認められるか、以下のページでご案内します。
 年金の逸失利益

死亡事故の解決事例

死亡事故の慰謝料と逸失利益について、解決事例を以下のページに掲載しています。
 死亡慰謝料・逸失利益の事例



さらに具体的には、ご相談いただけますでしょうか。

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このページの著者

 弁護士 滝井聡
  神奈川県弁護士会所属
    (登録番号32182)