賃金センサスによる逸失利益の計算

主婦の逸失利益計算などで使用

賃金センサスとは、政府が毎年実施している「賃金構造基本統計調査」の結果をまとめた、労働者の平均賃金の統計です。

交通事故の損害賠償では、主婦（家事従事者）の後遺障害逸失利益の計算などで使用されます。

賃金センサスは、雇用形態、職種、性別、学歴、年齢など様々な分類による平均賃金の統計があり、エクセル表としてインターネット上で公表されています（以下のサイト内）。
　　　e-Stat　　　　　　　　　　　
政府統計の総合窓口　　　　　
　　｜賃金構造基本統計調査　

後遺障害逸失利益の一般的な計算式は、以下のとおりです。

基礎収入×労働能力喪失率
×労働能力喪失期間の中間利息控除係数

このうち基礎収入は事故前の現実の収入額（年額）とするのが原則であり、主婦の家事の場合、会社員のような「源泉徴収票」などがないので、資料をほかに求めることになります。

そこで、賃金センサスを基礎収入の資料とし、逸失利益の計算に活用します。

また、会社員・公務員で比較的若い場合（おおむね30歳未満）や、学生・生徒等・高齢者で逸失利益を認める場合、あるいは収入の資料がある人でもその資料を用いることに疑義がある場合などに、賃金センサスを基礎収入の資料にすることがあります。

賃金センサスを基に、平成30年～令和4年の男女、男性、女性それぞれについて、学歴計・全年齢の平均賃金を集計すると以下のとおりです。

主婦（家事従事者）の逸失利益計算において、女性の平均賃金から学歴・年齢を問わずに算出する場合、上記の集計により、例えば令和3年の賃金センサスでは、基礎収入3,859,400円となります。

ただし、賃金センサスは、男女計・男性・女性それぞれについて、学歴ごとの統計や年齢ごとの統計もあり、どの箇所を用いるかは事情により様々です。

政府のウエブサイトである以下のページに、平成11年から令和4年までの賃金センサスが掲載されています。
　　　e-Stat　　　　　　　　　　　
政府統計の総合窓口　　　　　
　　｜賃金構造基本統計調査　

例えば令和3年の賃金センサスを使う場合、上記のページの中で、
「■令和3年賃金構造基本統計調査」の下、
「一般労働者」の下の、
「産業大分類」をクリックすると、以下のページが開きます。
　　　e-Stat　　　　　　　　　　　
政府統計の総合窓口　　　　　
　　｜データセット一覧　　　

この中で、「表番号」1番、
「学歴、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」
の「EXCEL閲覧用」という緑色のボタンをクリックします。

すると、
「第１表　年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」
という題名のエクセル表が開きます。

そのエクセル表の左端を見ながら下のほうへスクロールすると、以下の欄が現れます。

女
学歴計

その右のほうにある、以下の箇所を使います。

　　　　企業規模計（10人以上）

（この左や右にも欄がありますが、それらは使いません）

「きまって支給する現金給与額」は平均月額、「年間賞与その他特別給与額」は平均年額になっていて、単位は「千円」なので、以下の計算で基礎収入（年額）が算出されます。

　（270.2×12＋617.0）×1,000
　＝3,859,400円

男性の統計を使う場合は、上記のエクセル「第１表　年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」の中にある、

男
学歴計

という欄の中で、上で女性について掲載した「企業規模計（10人以上）」の表に相当する箇所を使います。

性別不問の場合、同エクセルの上のほうにある、

男女計
学歴計

という欄になります。

賃金センサスには、学歴別に区分した欄もあるので、学歴を考慮する場合は、それらの中で上記に相当する箇所を使います。

また、各学歴ごとに、年齢層別の欄もあり、年齢を考慮する場合は、それらの中で上記に相当する箇所を使います。

基礎収入については、事情によっては、減縮する反論が加害者側から出され争いになることがあります。
具体的にはご相談いただければと思います。

賃金センサスによって基礎収入を算出したあとは、そこへ、「労働能力喪失率」を乗じ、さらに「労働能力喪失期間」の「中間利息控除」係数を乗じます。
これらについては、以下のリンクから各ページをご覧いただけますでしょうか。

　弁護士滝井聡
　　神奈川県弁護士会所属
　　　（登録番号32182）