昇給遅延・学生の就職遅延と休業損害
昇給遅延による休業損害
給与所得者が交通事故で怪我をした場合、昇給が遅れて、事故がなければ得られるはずだった収入が得られなくなるということも起こりえます。
そこで、昇給をしていた場合の収入と、昇給せず実際に得た収入との差額を減収として、休業損害を加害者側へ請求することが多くあります。
原因・損害の証明が必要に
上記の請求の中には、通常の休業損害、すなわち、事故前と同等の収入が継続した場合の収入と、事故による怪我で欠勤等をしたことによって減少した現実の収入との差額も含まれるのが一般的です。
しかし、事故前と同等の収入が継続した場合を超えた、事故にあわず昇給をしていた場合の収入について休業損害が認められるためには、まず、その事故を原因として昇給の遅れが生じたことを証明する必要があります。
さらに、もし昇給していたらその後はいくらの収入が得られたはずで、いくらの損害が生じたのかということなども証明する必要があります。
それらを吟味して昇給遅延による休業損害を認めた裁判例として、大阪地裁平成6年3月28日判決、名古屋地裁豊橋支部平成23年12月15日判決などがあります。
学生の就職遅延による休業損害
学生が交通事故で怪我をした場合、就職が遅れて、予定していた収入が得られなくなるということがあります。
そのような場合の就職遅延については、休業損害を認めた裁判例は多くあります(たとえば、東京地裁平成12年12月12日判決、大阪地裁平成14年8月22日判決、名古屋地裁平成14年9月20日判決、京都地裁平成20年2月29日判決、東京地裁平成21年9月10日判決、大阪地裁平成30年4月16日判決など)。
大学受験の遅れで就職遅延も
上記のほか、大学受験の前に交通事故で怪我をして、大学受験が遅れ、それにより大学入学・卒業・就職とも遅れて、減収が生じるということも起こりえます。
この場合に就職遅延による休業損害が認められるためには、事故で怪我をしなかった場合に大学入学・卒業・就職それぞれを実現できた時期や、損害額などが認定され、事故と損害との相当因果関係が認められる必要があります。
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このページの著者
弁護士 滝井聡
神奈川県弁護士会所属
(登録番号32182)