下肢(足・股)の後遺障害
偽関節や長管骨変形などの後遺障害
交通事故によって、足に偽関節や長管骨変形が骨折後の後遺障害として残ることなどがあります。
また、足が切断されてしまうということも起こりえます。
そうした交通事故による足(下肢)の後遺障害は、「欠損」「機能」「変形」「短縮」の各障害に大別されています。
そのなかで、偽関節や長管骨変形は「変形障害」であり、切断は「欠損障害」です。
また、関節の可動域制限は「機能障害」に含まれ、このページのほか、可動域制限のページで詳しく解説しています。
そして、股関節・ひざ関節・足関節(足首)は下肢の3大関節と呼ばれ、これら関節は、後遺障害の等級の分類や認定基準に用いられています。
(足の指については、ここに含まず足指の後遺障害ページに掲載します)
足の欠損障害
両下肢を ひざ関節以上で失った |
1級5号 |
両下肢を 足関節以上で失った |
2級4号 |
1下肢を ひざ関節以上で失った |
4級5号 |
両足を リスフラン関節以上で失った |
4級7号 |
1下肢を 足関節以上で失った |
5級5号 |
1足を リスフラン関節以上で失った |
7級8号 |
- リスフラン関節とは、足の甲の中央付近にある関節です。
後遺障害の認定基準
ア 「下肢をひざ関節以上で失った」とは、次のいずれかに該当する場合とされています。
- a 股関節において寛骨と大腿骨を離断
- b 股関節とひざ関節との間において切断
- c ひざ関節において、大腿骨と脛骨及び腓骨とを離断
イ 「下肢を足関節以上で失った」とは、次のいずれかに該当する場合とされています。
- a ひざ関節と足関節との間において切断
- b 足関節において、脛骨及び腓骨と距骨とを離断
ウ 「リスフラン関節以上で失った」とは、次のいずれかに該当する場合とされています。
- a 足根骨(踵骨、距骨、舟状骨、立方骨及び3個の楔状骨からなる)において切断
- b リスフラン関節において中足骨と足根骨とを離断
足・股の機能障害
下肢の機能障害は、症状の程度と、その症状が両下肢に生じたか1下肢に生じたかや、3大関節(股関節・ひざ関節・足関節)のうちいくつの関節に生じたかで分類されます。
関節の可動域制限はこの機能障害に含まれます。
両下肢の用を全廃 | 1級6号 |
1下肢の用を全廃 | 5級7号 |
1下肢の3大関節中の 2関節の用を廃した |
6級7号 |
1下肢の3大関節中の 1関節の用を廃した |
8級7号 |
1下肢の3大関節中の 1関節の機能に 著しい障害を残す |
10級11号 |
1下肢の3大関節中の 1関節の機能に 障害を残す |
12級7号 |
後遺障害の認定基準
ア 「下肢の用を全廃」(1級・5級)とは、3大関節(股関節・ひざ関節・足関節)のすべてが強直した場合とされています。
なお、3大関節が強直したことに加え、足指全部が強直したものもこれに含まれます。
イ 「関節の用を廃した」(6級・8級)とは、次のいずれかに該当する場合とされています。
- a 関節が強直した
- b 関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にある
- 「これに近い状態」とは、他動では可動するものの、自動運動では関節の可動域が健側の可動域角度の10%程度以下となったものをいう。
- c 人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されている
ウ 「関節の機能に著しい障害を残す」(10級)とは、次のいずれかに該当する場合とされています。
- a 関節の可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されている
- b 人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、上記イのc以外
エ 「関節の機能に障害を残す」(12級)とは、関節の可動域が健側の可動域角度の4分の3以下に制限されている場合とされています。
足の変形障害
1下肢に偽関節を残し、 著しい運動障害を残す |
7級10号 |
1下肢に偽関節を残す | 8級9号 |
長管骨に変形を残す | 12級8号 |
- 長管骨とは、四肢を形づくる管状の骨であり、下肢の長管骨は大腿骨・脛骨(けいこつ)・腓骨(ひこつ)です
- 偽関節については、後記の認定基準をご覧いただければと思います。
後遺障害の認定基準
ア 「偽関節を残し、著しい運動障害を残す」(7級)とは、次のいずれかに該当する場合とされています。常に硬性補装具を必要とするかどうかが、7級と8級を区分することになります。
- a 大腿骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残し、常に硬性補装具を必要とする
- b 脛骨及び腓骨の両方の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残し、常に硬性補装具を必要とする
- c 脛骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残し、常に硬性補装具を必要とする
イ 「偽関節を残す」(8級)とは、次のいずれかに該当する場合とされています。
- a 大腿骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残すもので、上記アのa以外
- b 脛骨及び腓骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残すもので、上記アのb以外
- c 脛骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残すもので、上記アのc以外
ウ 下肢の「長管骨に変形を残す」(12級)とは、次のいずれかに該当する場合とされています。これらの変形が同一の長管骨に複数存する場合も含まれます。
- a 次のいずれかに該当する場合であって、外部から想見できる程度(15度以上屈曲して不正癒合)以上のもの
- (a) 大腿骨に変形を残す
(b) 脛骨に変形を残す
なお、腓骨のみの変形であっても、その程度が著しい場合にはこれに該当する。 - b 大腿骨もしくは脛骨の骨端部に癒合不全又は腓骨の骨幹部もしくは骨幹端部に癒合不全を残す
c 大腿骨又は腓骨の骨端部のほとんどを欠損
d 大腿骨又は腓骨(骨端部を除く)の直径が3分の2以下に減少
e 大腿骨が外旋45度以上又は内旋30度以上回旋変形癒合
この場合、外旋45度以上又は内旋30度以上回旋変形癒合していることは、次のいずれにも該当することを確認することによって判定する。 - (a) 外旋変形癒合にあっては股関節の内旋が0度を超えて可動できないこと、内旋変形癒合にあっては股関節の外旋が15度を超えて可動できないこと
(b) X線写真等により、明らかに大腿骨の回旋変形癒合が認められること
なお、長管骨の骨折部が良方向に短縮なく癒着している場合は、たとえ、その部位に肥厚が生じていても長管骨の変形としては取り扱わない。
足の短縮障害
1下肢を5㎝以上短縮した | 8級5号 |
1下肢が5㎝以上長くなった | 8級相当 |
1下肢を3㎝以上短縮した | 10級8号 |
1下肢が3㎝以上長くなった | 10級相当 |
1下肢を1㎝以上短縮した | 13級8号 |
1下肢が1㎝以上長くなった | 13級相当 |
後遺障害の認定基準
下肢の短縮については、上前腸骨棘と下腿内果下端間の長さを健側の下肢と比較することによって等級を認定するとされています。
測定に当たっては、事前に両端部に印をつけ、巻尺は屈曲しないように注意を要します。
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