傷害慰謝料(入通院慰謝料)

交通事故の入院・通院の慰謝料

傷害慰謝料は、交通事故の被害者がその事故により傷害を負った場合に発生する、症状固定までの入院・通院期間中の精神的苦痛に対する慰謝料です。 
精神的苦痛とは、本来は目に見えないものですが、お金にするといくらで慰謝されるかの評価をすることになります。

傷害慰謝料は入通院慰謝料ともいわれ、慰謝料額は、計算方法や状況により症状固定日までの入院・通院の期間や実通院日数を基に計算されます。 
また、慰謝料の増額事由が問題となることもあります。


傷害慰謝料の計算

交通事故の傷害慰謝料(入通院慰謝料)は、通常、弁護士基準・自賠責基準・任意保険基準のうち、弁護士基準で計算した額が他の2基準を上回ります。
このため、傷害慰謝料は弁護士基準で計算すべきこととなります。

それぞれの基準による傷害慰謝料の計算は、以下のとおりです。

弁護士基準による計算

交通事故における傷害慰謝料(入通院慰謝料)計算の弁護士基準として、日弁連交通事故相談センター東京支部(赤い本)は、入院期間と通院期間により、原則的な慰謝料額の表(別表Ⅰ)と、むち打ち症で他覚所見がない場合等の慰謝料額の表(別表Ⅱ)を設定しています。
この基準は、「裁判基準」や「赤本基準」とも呼ばれます。

たとえば通院3か月(入院なし)の場合、それぞれ修正なく適用されると、傷害慰謝料の額は原則(別表Ⅰ)73万円、むち打ち症で他覚所見がない場合等(別表Ⅱ)は53万円となっています。
いずれも、自賠責基準による傷害慰謝料の額を上回っています。

慰謝料額が入院や通院の月数ごとに設定されていて、ちょうどの月数にならない場合は日割計算をすることになります。
傷害慰謝料の弁護士基準による計算について、具体的には以下のリンク先のページに掲載しています。
 弁護士基準による傷害慰謝料

自賠責基準による計算

傷害慰謝料(入通院慰謝料)の自賠責基準による計算は、4300円に「実通院日数×2」か「治療期間」の少ない方を乗じて計算します(令和2年3月31日までに発生した事故については4200円に乗じます)。
例えば、以下の通りです。

実通院日数46日(×2=92日)、治療期間90日の場合、4300円×90=38万7000円。
実通院日数44日(×2=88日)、治療期間90日の場合、4300円×88=37万8400円。

ただし、傷害に対する自賠責保険の賠償額は120万円が限度と定められており、この120万円は、治療関係費(診療費、通院費など)、休業損害、傷害慰謝料など傷害による損害の合計の限度額です。
このため、これら合計額が120万円を超えると、上記の計算方法による傷害慰謝料の全額は支払われないことになります。

任意保険基準

任意保険会社は、傷害慰謝料(入通院慰謝料)について各会社ごとに基準を設定していて、実際の賠償提示では、自賠責基準と弁護士基準の間の金額が多く見受けられます(自賠責基準については傷害による損害の合計120万円が限度額であることを前提)。

傷害慰謝料について、任意保険会社からの提示では計算式が示されていないことが多くあります。
また、自賠責基準による計算のまま任意保険会社から提示されることもあります。


  • なお、自賠責の支払限度額以下の範囲では過失割合によって以上と異なる場合があり、この点については、「交通事故の過失割合」ページの下のほうに、「自賠責は過失7割未満なら全額」という見出しで記載しています。

慰謝料の増額事由

交通事故の慰謝料は、加害者の故意もしくは重過失による事故の場合、増額されることがあります。例えば、ひき逃げ、酒酔い、著しいスピード違反、ことさらに信号無視などが増額事由とされています。
また、加害者に著しく不誠実な態度があった場合も、増額事由とされることがあります。
ただし、明確な基準があるわけではなく、何かあれば必ず増額事由になるわけではありません。


「交通事故の治療期間の賠償」冒頭ページへ、以下をクリックして移動できます。
 交通事故の治療期間の賠償